産業廃棄物の汚泥とは。種類や処理方法を解説
汚泥とは建設現場や排水処理の過程などで発生する泥状の廃棄物で、適切な処理が求められる産業廃棄物の一種です。
「汚泥の種類や処理方法がわからない」「どのように分類されるのか知りたい」と悩む方も多いのではないでしょうか?
本記事では、汚泥の種類や発生の仕組み、処理方法をわかりやすく解説し、環境保全のために必要なポイントを紹介します。
汚泥とは
汚泥とは、土木作業や建設工事などの事業活動の中で生じる泥状の物質の総称です。汚泥の中には重金属を始めとした有害物質を含んでいることもあります。
基準を超える有害物質が含まれていて危険性が高い汚泥は特別管理産業廃棄物として扱い、適切な処理を行わなければなりません。
たとえば以下のような汚泥が特別管理産業廃棄物に該当します。
- PCB(ポリ塩化ビフェニル)に汚染された汚泥
- 下水道法施行令第13条の4で指定された汚泥
- 重金属類(鉛や水銀など)や1,4-ジオキサン、有機塩素化合物、農薬、ダイオキシン類を一定濃度以上含むもの
こうした汚泥が適切に処理されず、下水道に流したり山に捨てたりするなどの不法投棄が問題となることもあります。
汚泥の種類
汚泥は、含まれる成分や発生源によって有機汚泥と無機汚泥の2種類に分類されるのが一般的です。
法律上では有機汚泥と無機汚泥を明確に分ける必要はありません。ただし、業者によっては無機汚泥のみ処理を受け付けるなどのケースもあるため、汚泥の処理を委託する際には注意が必要です。
ここからは汚泥の種類について解説します。
①有機汚泥
有機汚泥とは、動物から出た排泄物や食べ物の残骸などの有機物を多く含んだ汚泥のことです。
主に食品工場や動物飼育場、下水処理場などの排水を処理する際に発生します。
②無機汚泥
無機汚泥とは、その名の通り無機物を多く含む汚泥のことです。
水銀や亜鉛などの金属成分を含む汚泥や、建設工事での掘削作業で発生する泥水や泥土などが該当します。
無機汚泥の中でも建設現場で発生するものは建設汚泥と呼ばれており、掘削作業で地中から出る泥状の物質や水を含む土砂が代表的です。
産業廃棄物と一般廃棄物の違い
汚泥は発生源や含まれる物質によって「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられる点に注意しましょう。
産業廃棄物における汚泥は業種の指定がないため、どの業種から排出されても産業廃棄物として扱います。
一方で、し尿を含む汚泥や家庭からの排水処理で発生する汚泥は一般廃棄物に当たります。
環境保全や安全確保の観点から、汚泥は分類によって法令に基づき管理や処理をすることが極めて重要です。
汚泥の具体例
汚泥にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴があります。ここで具体的な汚泥の例と発生原因や性質について見ていきましょう。
建設汚泥
建設汚泥とは、建設工事の過程で発生する汚泥全般のことです。
地盤の掘削や工事で使われた水が混ざり合うことで泥状物質となり、その性質によって「非自硬性汚泥」と「自硬性汚泥」の2つに分類されます。
種類 | 特徴 | |
非自硬性汚泥 | 泥水状汚泥 | ・セメントなどが入っておらず放置しても固まらない ・水分を多く含んだ泥状の汚泥 ・脱水処理で水分を取り除き、固形物として処分できる |
泥土状汚泥 | ・セメントなどが入っておらず放置しても固まらない ・泥水状汚泥に比べて水分量が少ない ・機械による脱水処理が困難 | |
自硬性汚泥 | ・セメントや凝固剤などを含んでいるため放置すると固まる |
建設現場で掘削作業が行われる際に発生する汚泥の大半は非自硬性汚泥です。
自硬性汚泥は処理が遅れると硬化してしまい取り扱いが難しくなるため、現場では迅速に対応しなければなりません。
下水汚泥
下水汚泥とは、下水処理の過程で発生する汚泥のことです。
家庭や事業所から流れ出た汚水は、下水処理場で微生物の働きによって浄化され、分解された有機物や微生物が沈殿して汚泥となります。
ビルピット汚泥
ビルピット汚泥とは、ビル内の排水槽(ビルピット)に溜まる泥状の廃棄物を指します。
そもそもビルピットの役割は、地下の施設から排出される汚水を一時的に貯め、ポンプでくみ上げて下水道に流すことです。
ここで出る汚泥は、し尿が含まれている場合だと一般廃棄物、し尿が含まれない場合には産業廃棄物に分類します。
汚泥の処理方法
汚泥の処理は脱水や焼却などによって減量化し、最終処分するのが基本です。近年では、汚泥の特性を活かしてリサイクルするケースも増えてきました。
実際に汚泥をどのように処分するかは、その性質や含まれている物質によって異なります。ここで代表的な汚泥の処理方法を見ていきましょう。
焼却
代表的な汚泥の処理方法の一つが焼却で、泥状の汚泥を乾燥させ、その後1000度ほどの高温で焼くという方法です。
この過程で汚泥に含まれる有機物の大半は消失し、最終的に害のない固形物質へと変わります。
燃えがらやばいじんといった別の産業廃棄物が発生する場合もあるため、それぞれ適切に管理しなければなりません。
燃えがらについての詳しい情報は、下記の記事をご覧ください。
溶融
溶融は焼却と同様に熱を加えることで汚泥を無害化する方法です。
1400度ほどの高温で汚泥を溶かし溶岩のような状態にした後、冷却してガラス状の溶融スラグへと変えて処理します。
溶融スラグには、急速に固める急冷スラグやゆっくり冷やす徐冷スラグがあり、路盤材などに再利用されます。
埋立
汚泥が再利用できない場合や、これ以上の減量が難しい場合には埋立処理を行います。
ただし汚泥の種類や性質によって、持ち込むことのできる処分場の種類が異なる点に注意が必要です。汚泥ごとに適切な処分場へ搬入しなければなりません。
セメント原料化
汚泥の処理の一つにセメント原料化という方法もあります。
セメントの原料は主に石灰石ですが、製造過程で粘土も必要となります。下水汚泥は粘土と似た性質を持っているため、これをセメント製造時の原燃料として使用することが可能です。
造粒固化
造粒固化は、無機汚泥に固化剤を加えて混ぜ合わせ、汚泥をリサイクル処理土や骨材として再利用する方法です。
特に建設工事などで発生した無機汚泥は、再び工事現場で利用されるなど、循環型リサイクルとしての活用が期待されています。
脱水
脱水は、汚泥から水分を分離させる基本的な処理方法です。
まず汚泥を脱水機にかけ、泥と水に分離します。濃縮された汚泥には薬品を加え、さらに圧力をかけて水分を取り除きます。
脱水された汚泥は「脱水ケーキ」と呼ばれ、その後の焼却や埋立処理に利用されることが多いです。
脱水機にはフィルターで汚泥を搾るフィルタープレス型や、回転によって水分を取り除くスクリュープレス型など、さまざまな種類があります。
油水分離
油分を含む汚泥は苛性ソーダで中和し、微生物処理を行います。その後、加圧によって油分と水分を分離します。これが油水分離です。
堆肥化
堆肥化とは、有機汚泥を堆肥の原料として再利用する方法です。下水処理場で発生した汚泥を脱水した後、発酵させて堆肥化します。
こうしてできた堆肥は農地での利用が進んでおり、環境に優しいリサイクル方法として注目されています。
メタン発酵
メタン発酵とは、嫌気性細菌を活用し、有機汚泥に含まれる有機物をメタンガスと炭酸ガスに分解する処理方法です。
メタンは天然ガスの成分でもあり、発電や燃料などのエネルギー資源として利用が可能です。残渣は堆肥として再活用されるため、有機汚泥の資源化を進める有効な方法となっています。
産業廃棄物の汚泥に関連するよくある質問
ここからは産業廃棄物の汚泥に関するよくある質問について、わかりやすくお答えします。
泥土や土砂と汚泥の違いは何ですか?
泥土とは、建設工事に伴って発生する泥状の物質や土砂も含む総称です。土砂は掘削作業などで発生する土や砂のことを指し、泥土と同じく通常は再利用が前提とされています。
泥土や土砂という名称は産業廃棄物にはありません。
一方で建設工事で発生した泥状の物質で再利用が難しい状態のものは汚泥(建設汚泥)として産業廃棄物に分類されます。
具体的には下記のような状態で汚泥かどうかが判断されます。
- コーン指数が200kN/㎡以下
- 一軸圧縮強度が50kN/㎡以下
- 泥がダンプトラックに山積みできない
- 上を人が歩けない など
汚泥は廃棄物処理法に基づき適切に処理しなければなりません。判断を誤ると法令違反とされる可能性があるため、注意が必要です。
汚泥は環境問題になりますか?
汚泥は、適切に処理されないと深刻な環境問題を引き起こす可能性のある廃棄物です。
汚泥が自然環境に流出すると、水や土壌が汚染されて悪臭問題を引き起こしたり、生態系へ悪影響を与える懸念もあります。
人間の健康にも悪影響を及ぼすリスクがあるため、法令に基づいた適切な処理と管理が必要不可欠です。
まとめ
汚泥は適切に処理しなければ、水質や土壌汚染を引き起こす可能性があります。
だからこそ認可を得た産業廃棄物処理業者に委託し、適切な処理を行うことが大切です。
環境を守るためにも、汚泥の正しい管理と処分に取り組みましょう。