産業廃棄物の金属くずとは。定義や種類・処理方法を解説
産業廃棄物の金属くずを廃棄する方法や処理費用、リサイクルの可能性などを知りたいと思っていませんか?
この記事では金属くずの種類や処分方法などの産業廃棄物としての取り扱い、さらにマニフェストの知識まで、知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
適切な金属くずの処理を行うためのポイントを解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
産業廃棄物の金属くずとは?
金属くずとは、事業活動によって発生する金属廃棄物の総称であり、産業廃棄物の20種類のうちの一つです。
環境庁の通知では「鉄鋼又は非鉄金属の研磨くず及び切削くず等が含まれるもの」と定義されており、鉄や非鉄金属の廃棄物が該当します。
複合素材でも構成素材のうち金属がもっとも多く含まれる場合は、金属くずとして扱います。たとえばハンダかすや鉄鋼、非鉄金属の研磨くず・切削くずなどが代表例です。
金属くずを排出する業種には特定の指定はありません。
金属加工場や製造業はもちろんのこと、飲食店、スーパーマーケット、小売店、オフィス、さらには医療機関など、幅広い事業場からの排出が考えられます。
金属くずの大きな特徴は再利用がしやすいということです。適切に処理を行うことで有価物として買取される機会も多く、資源の有効活用につながっています。
参考:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」
金属くずの種類
金属くずは、主に鉄くず(鉄スクラップ)と非鉄金属くずに分類されます。
鉄くずは金属くず全体の多くを占める一方で、アルミやステンレス、レアメタル、銅などの非鉄金属も対象です。
金属くずがよく排出されるケースと具体例
金属くずはさまざまな現場や事業活動の中で発生します。ここでさまざまな現場ごとに排出される金属くずの具体例を見ていきましょう。
製造業
製造業の工場は金属くずが頻繁に排出される場所の一つです。
たとえば、鉄板や金属部品を切削加工する際には、ダライ粉や切粉、カット粉やパーマ屑といった小さな金属くずが発生します。
また、工場で使用する機械やスパナ、モンキーなどの手動工具が破損や寿命を迎えた際には、工具スクラップとして処分しなければなりません。
鉄板の切断や加工時に出る端材は新断スクラップと呼ばれます。廃棄された自動車から発生する自動車系スクラップも製造業の現場ではよく見られる金属くずです。
オイルや液体を保存するために使用されるドラム缶も容器系スクラップとして処理されることがあります。容器系スクラップは、内部に残液がないことや内部が見える状態であることが重要です。
解体現場
解体現場や建設現場でも金属くずの排出は多く、建築工事によって発生する鉄筋やトタン、アルミサッシといった建築系スクラップが代表的です。
建物の構造部分や付帯設備の解体では、鉄筋屑や建設機械から排出される金属くずが多く、道路の側溝に用いられるグレーチングなども金属くずとして扱われます。
解体現場から排出される金属くずは、特別な問題がない限り再利用されるのが一般的です。
小売店
小売店では、店舗の模様替えや移転、閉店の際に金属くずが発生します。たとえば、商品を陳列する棚や什器に使用されているネジやナット、ボルトなどです。
複数の店舗が同じテナント内に入っている場合、移転や閉店のタイミングが重なると、一度に大量の金属くずが排出されることもあります。
病院
病院でもさまざまな金属くずが発生します。
治療や手術に使用する機械や器具、ベッドやロッカーといった備品は、使用後や買い替えの際に金属くずとして処分されます。
近年では、電子カルテの導入が進んでいることから、紙カルテの保存用に使われていたキャビネットが金属くずとして廃棄されるケースも増えています。
病院から排出される金属くずは医療機器が含まれることも多いため、安全管理や衛生面に配慮した処理が重要です。
金属くずの処分方法
金属くずは、産業廃棄物の中でも再生利用率が非常に高い廃棄物です。
環境省の調査によると、金属くずの再生利用率は95.9%に達し、がれき類や鉱さいなどと並んでリサイクルが積極的に行われています。
ここで金属くずの処分方法を見ていきましょう。
参考:環境省「令和4年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」
リサイクル
金属くずをリサイクルする際、処理場に持ち込まれた金属くずは不純物を含んでいることが多いため、再資源化するためには前処理が欠かせません。
リサイクルの工程は大きく分けて金属回収と金属精錬の2つに分類されます。
金属回収
金属回収とは、廃棄物の中から鉄や金、銀、銅などの金属を取り出すというリサイクル方法です。
たとえば電子機器に使われているプリント基板(PCB)からは、貴金属である金や銀(レアメタル)を取り出せます。
金属回収は産業廃棄物に限らず一般家庭から排出される廃家電も対象です。
近年では、ホームセンターや家電量販店などで廃家電を無料引き取りし、金属回収業者に引き渡す取り組みも広がっています。
金属精錬
金属精錬は、不純物を多く含む金属から不純物を取り除き、高純度の金属を抽出するというリサイクル方法です。
特にアルミニウムや鉄は精錬を繰り返すことで再利用できるため、非常にリサイクル適性が高い金属とされています。
金属くずの処理費用の相場
金属くずの処理費用は1~40円/kgが相場とされています。
しかし、実際の費用は金属くずの種類や状態、処理を依頼する地域、業者ごとに異なるため、一律に決まるものではありません。
具体的な費用や条件については、産業廃棄物業者へ問い合わせて確認してください。
金属くずを処理する際のマニフェストとは?
金属くずを産業廃棄物として処理する場合、排出事業者は廃棄物処理業者に運搬・処分を委託する際にマニフェストを交付しなければなりません。
マニフェストの規定は複雑で、交付内容だけでなく保管期間も定められています。
適切な手続きを理解し産業廃棄物の処理をスムーズに進めましょう。
ここでマニフェストを交付する際のルールを解説します。
産業廃棄物として処理するとき
金属くずを産業廃棄物として処理する場合、収集運搬業者や処分業者に委託する際にはマニフェストの交付が必要不可欠です。
紙のマニフェストを使用する場合は、A票からE票までの7枚綴りの書類が必要になります。
A票は排出事業者が作成し、交付した日から5年間保管しなければなりません。
B票以降のマニフェストは、運搬業者や処分業者が対応し、それぞれの業務が完了した日から5年間の保管が必要です。
注意が必要なのは、A票以外のマニフェストが排出事業者の手もとに戻るタイミングが異なることです。
最終的に戻ってくるE票は処分業者が処理を完了したことを示しています。E票の受領日から5年間は、すべてのマニフェストを保管しなければなりません。
積み替えるとき
金属くずや鉄くずを途中で積み替える場合にも、マニフェストの交付が必要です。
マニフェストは積み替えの有無に関係なく必須であることを覚えておきましょう。
積替保管の許可について
廃棄物の収集・運搬を行うには産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。この許可には以下の2種類があります。
- 積替保管あり……自社の保管場所などで一時保管や別の車両への積み替えが可能です。
- 積替保管なし……積み替えや一時保管はできず、運搬のみが可能です。
すべての業者が「積替保管あり」の許可を持っているわけではありません。
業者に委託する際は必ず許可証を確認 し、積み替えが可能かどうか事前に確認しましょう。
有価物として処理するとき
金属くずや鉄くずが有価物として取引されるケースもあります。有価物とは、金銭的な価値を持ち、取引によって利益が生じる廃棄物のことです。
有価物として扱う際には注意が必要で、輸送費が取引額を上回る場合には「逆有償取引」として扱われます。
逆有償取引とは、金属くずや鉄くずを買取業者に引き渡すまでは産業廃棄物として扱い、引き渡し後に有価物として扱う方法です。
この場合、収集運搬の過程では産業廃棄物として扱われるため、マニフェストの交付が必要になります。
ただし通常の産業廃棄物処理とは異なり、収集運搬業者が金属くずを持ち帰った時点で有価物として販売可能になるため、最終処分完了を示すE票の返送は不要です。
必要なのは運搬完了を示すB2票までの返送です。B1票・B2票を受け取ったら、A票とともに保管するようにしましょう。
適切なマニフェスト管理は法令遵守のカギとなります。業者と取引する際は、必ず内容を確認し、正確に運用するよう心がけましょう。
具体的な内容については業者に直接確認するようにしてください。
まとめ
金属くずは鉄くずと非鉄金属に分類され、さまざまな現場で排出される再利用率の高い産業廃棄物です。
処分方法にはリサイクルと埋立処分があり、適切に処理することで資源の有効活用につながります。
処理を委託する際には必ず認可を得た産業廃棄物処理業者に依頼し、マニフェストを正しく運用しましょう。