廃酸とは。定義と種類や具体例、処分方法を解説
廃酸は製造業や工業などの分野から発生する酸性の液状産業廃棄物の総称です。
特にpH値が著しく低いものや有害物質を含むものは「特別管理産業廃棄物」に分類され、法的に厳格な管理が定められています。
それでは具体的にどのような産業廃棄物が廃酸に当たるのでしょうか。本記事では、廃酸の定義や種類と具体例、処理方法について解説します。
廃酸の定義と基準
廃酸とは、産業活動や事業活動などで排出された酸性の液状の廃棄物です。廃酸の定義は「廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類をはじめ酸性の廃液のすべてを含むものであること。」と環境省より示されています。
液状の産業廃棄物で基準となるのが水素イオン濃度pHの数値7です。廃酸はpH7未満の酸性を示す廃液で、ph7より大きいアルカリ性の廃液は廃アルカリに分類されます。
廃酸の中でも特に有害で危険なものは「特別管理廃棄物」に該当し、普通の産業廃棄物とは異なり、慎重な取り扱いが欠かせません。
特別管理廃棄物に分類される条件は、pH2.0以下の非常に強い腐食性を示すものや重金属や有機塩素化合物等を一定濃度以上含むものなどがあります。
重金属や有機塩素化合物などを一定の濃度以上含んでいる廃酸は、特別管理廃棄物中でも「特定有害産業廃棄物」というジャンルに分類されます。
参考:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」
廃酸の種類・具体例
廃酸は廃硫酸や廃塩酸、有機廃酸類など、産業活動で排出されたすべての酸性廃液です。排出源は、化学工場や硫酸、塩酸、硝弗酸、リン酸などがよく用いられる鉄鋼や電気機械工業など多岐にわたります。
身近な廃酸の例が炭酸飲料です。炭酸飲料はpH7以下の酸性の液体のため、産業廃棄物として排出された場合は廃酸にあたります。
その他の廃酸の具体例には以下のようなものがあります。
- 無機廃酸:硫酸、塩酸、硝酸など
- 有機廃酸:ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸 など
廃酸の処分方法
廃酸の再利用率は約28.8%と環境省より発表されてました。産業廃棄物の中でも再利用率は3番目に低く、廃酸の再利用は今後の課題の一つとなっています。
現在の廃酸の処理方法は、大きく分けて焼却・中和・再資源化の3種類です。ここでは廃アルカリの処理方法について詳しく解説します。
参考:環境省「令和4年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」
焼却
廃酸のもっとも一般的な処理方法が焼却処理です。焼却は廃棄物を高温で燃やし、有害物質を分解・無害化します。
廃酸の焼却の際、液状のまま焼却すると燃えにくく、焼却処理が不完全になる可能性も否めません。そのため、焼却時に廃酸は細かい霧状にしてから焼却炉に噴霧して処理を行います。
中和
廃酸のもう一つの処理方法が中和処理です。中和処理は、酸性である廃酸に廃アルカリなどのアルカリ性の物質を加えて酸性を中和します。
中和処理では、中和反応によって新たに汚泥が発生したり、廃酸の種類によっては有毒ガスが発生する場合があるため、注意が欠かせません。アルカリ剤の選定や添加量など正しい知識や技術、設備のもとで中和処理をする必要があります。
再資源化
廃酸の再利用率は産業廃棄物の中で低いものの、再資源化(リサイクル)も行われています。廃アルカリの中和剤として活用する方法がその一つです。
その他にも、廃酸を冷却し不純物を取り除いて、再度利用できる状態にする方法もあります。金属成分が含まれる廃酸は、金属成分を沈殿させて回収し、資源として再利用します。
廃酸に関連するよくある質問
廃酸は廃液の中でもpH7未満の酸性を示す液状産業廃棄物です。廃酸は金属を腐食させたり、皮膚や粘膜に強い刺激を与える恐れがあり、取り扱いに注意が欠かせません。ここでは、廃酸に関連するよくある質問についてお答えします。
廃酸の処分費用はいくらですか?
日本での廃酸の処分費用は一般的に30〜100円/kg程度が相場と言われていますが、実際には廃酸の性状や種類により異なります。地域により処理費用の相場もことなるので、処理業者に問い合わせて確認しましょう。
pH2は危険ですか?
pHが2.0を下回るということは、非常に強い酸性を意味し、危険です。皮膚や粘膜、目、呼吸器などを強く刺激し、熱傷を引き起こす可能性があります。
また、強い酸性は金属を激しく腐食させる特徴があり、pH2.0は、鉄が錆びつきボロボロに崩壊するほど強い酸性です。設備の損傷や漏洩事故につながる可能性も否めません。そのため、pH2.0以下の廃酸は特定有害産業廃棄物に指定され、管理や取り扱いが厳しく規制されています。
まとめ
廃酸とは、産業活動や事業活動などで排出された液状の廃棄物です。廃液の中でもpH7未満の酸性を示すものが廃酸に分類されます。さらに、pH2.0を下回る廃酸は特定有害産業廃棄物に該当し非常に危険な物質です。
廃酸の排出源は化学工場や鉄鋼、電気機械工業などで、代表的なものとして硫酸や塩酸、硝酸などがあります。排出された廃酸は適切な処理が欠かせません。廃酸の処理方法は、大きく分けて焼却処理・中和処理・再資源化があります。
強い酸性を示す廃酸は、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性がある危険な物質です。処理には正しい知識や技術、設備のもとで行う必要があります。廃酸を所有している方は、認可を得た産業廃棄物処理業者へ処理を委託しましょう。